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ブログ「ITコスト削減と価格交渉の勘所」

IT投資対効果の評価方法

プロセス・コストの分析方法

 業務プロセスのコストを分析する方法として昔から有名なのはレーンごとに業務フローを列挙するというものです。 業務担当者AがNo101のタスクを終了すると、その業務は次のレーンの担当者に引き継がれます。このケースでは、次の担当者は存在せずシステムが処理するので、業務遂行主体はシステムということになります。この業務フローは、システムがNo201のタスクを処理するとすべて終わりとなります。    業務プロセス全体のコストは、各タスクのコストを総和したものになります。各タスクのコストは、平均所要時間と時間単価によって計算されます。  システム投資によって生み出されるキャッシュ・フローは、この業務フローにおいてシステムが担当している部分を人的作業に置き換えた場合の、そのタスクのコストがいくらになるかという視点で算出します。システム化がゼロだった場合の、総人件費がシステムが生み出すキャッシュ・フローの最大値です。

ITバランス・スコアカードへの応用

 バランス・スコアカードの考え方を情報システムに応用したのがITバランス・スコアカードです。情報システムの場合には、明確な財務目標がない場合もありますから、実際には全体コストの削減や資産効率の向上といったものを目標とします。  以下はITバランス・スコアカードの戦略マップと設定したKPIの具体例です。

バランス・スコアカードの基本的な考え方

 バランス・スコアカードは、米ハーバード大学のロバート・S・キャプラン教授経営コンサルタントのデビッド・P・ノートン博士が考案した、情報化社会に対応した新しい業績評価フレームワークです。  従来の財務分析による業績評価(財務の視点)に加えて、顧客の視点、業務プロセスの視点、成長と学習の視点(アイデア、モチベーションなどの無形資産)をプラスした評価を行なうことで、 企業の価値を総合的に評価します。  企業は大きなビジョンをもとに戦略が策定されます。そして、その戦略を実現するための目標を定めるわけですが、バランススコアカードではここに上記4つの視点を活用します。各視点ごとに具体的目標を設定し、その進捗度合いを検証するための評価指標(KPI)を設定、到達度を評価していきます。  4つの視点における各目標やそれに基づくKPIは独立したものもありますが、相互に関連性があるものも存在します。的確に評価するためには相互の因果関係も理解しておく必要があるため、戦略マップと呼ばれる因果関係の地図も合わせて作成します。

キャッシュ・フローの予測が困難なシステム

 情報システムはその種類によってキャッシュ・フローの予測が困難なものがあります。特に情報系のシステムには直接その効果を金額換算できないものいくつか出てきます。またインフラ系のシステムも場合によってはキャッシュ・フローの換算が難しくなります。  一方、業務系のシステムは比較的キャッシュ・フローへの置き換えが簡単です。業務系システムを導入する効果を一般化すると以下の4種類に集約できます。  ・人員のシステムへの単純な置き換え ・システムを使ったリソースの最適化 ・処理能力の向上 ・人的ミスの回避  これらについては、削減された人件費など直接的にキャッシュ・フローを生み出す原資が存在するので、キャッシュ・フローの予測は容易です。  直接的にキャッシュ・フローに換算できないものについては、思い切って評価対象から除外するか、関連性のあるその他システムから、名目上、貢献度に合わせてキャッシュ・フローを分けてもらうなどの方法があります。

初期投資額の不確実性をどう考えるか?

 DCF法を情報システムに適用するにあたっての主要な問題のひとつが、初期投資額の不確実性といえるでしょう。 通常の投資プロジェクトであれば、1億円の投資で得られるものはほぼ決まっているので、投資金額自体が変化することはないと想定して計算を進めていきます。しかし情報システムの場合には、初期投資金額自体に大きなブレがあります。当初は1億円と思っていたものが、実際に作ってみたら3億円だったということがザラにあるのです。1億円で投資対効果がプラスと判断していたのに、実際には3億円というのでは話になりません。 DCF法をうまく適用させるためには、1億円は1億円で確定できるようする必要があるのです。  情報システムの初期投資額が大きくブレるのは、ソフトウェアの生産性にばらつきがあるからです。生産性が低いチームと高いチームでは最大6倍近くの差がつく可能性があります。弊社には3000件近いシステム・コストの評価実績がありますが、同一条件であっても6倍近く生産性が異なる事例が見られます。  しかし初期投資額のブレというものは、システムの規模を事前に特定し、開発にあたるチームの生産性を正しく評価することではるかに正確に予測することができるようになります。どのような条件の時に生産性がどの程度上下するのかというメカニズムは相当な水準まで解明されてきています。正しく事前評価をすれば、1億円が3億円になってしまうようような事態は避けることができるのです。

DCF法をIT投資に応用する場合の注意点

 通常、投資案件の意思決定を行うためには、DCF法と呼ばれる手法がよく用いられます。投資によって生み出される将来のキャッシュ・フローを予測し、これを一定の割引率で割り引き、現在価値を算出するというものです。計算された現在価値が、初期投資側を上回っていれば、投資に値しますが、下回っている場合には、不適格とみなされます。この方法は不動産や工場など既存の設備投資の世界では比較的ポピュラーなやり方です。  ところがITの分野にこれを応用しようと思うと、以下のような問題が発生します。  ①初期投資金額にも不確実性がある ②キャッシュ・フローの予測が困難な案件がある ③定性効果のキャッシュ・フローへの反映  次回以降では、それぞれの問題点について解説します。

各期のキャッシュ・フローにバラツキがある場合

 DCF法では、システム投資によって得られる各期のキャッシュ・フローを予測し、その現在価値を総和したものをシステム投資の価値と計算します。 システム化対象業務が単純な流れ作業の場合には、システム投資によって得られるコスト削減額はある数値で一定になる可能性が高いといえるでしょう。この場合のキャッシュ・フローは毎年一定額として問題ありません。  しかしシステム投資が事業収益と直接関係しているような場合や複雑な条件下でシステムを投資する場合などには、キャッシュ・フローがブレる可能性があります。このような場合には、ブレの範囲をあらかじめ設定しておき、その中で現実のブレがランダムに発生すると仮定してシミュレーションを行います(モンテカルロ・シミュレーション)。  図は平均すると1億円のキャッシュ・フローを生み出すシステムをシミュレーションした例です。各期ともに平均値から上下10%のブレがあると仮定します。パソコン上でランダムにブレを発生させ、1000回繰り返し演算し、最終結果の分布を評価します。  最終的には現在価値が4億円程度が最頻値となり、現在価値がマイナスなる確率は10%程度でした。3億円以上となる確率は65%程度なので、3億以下の投資であれば3分の2の確率で案件は成功するということになります。

DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法とは?

 あるプロジェクトが将来生み出すキャッシュ・フローの現在価値を算出する方法をDCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)と呼びます。DCF法の概念は以下のようになっています。  毎年6円のキャッシュを生み出すプロジェクトがあると仮定します。今年の六円は今現在の値段なので6円の価値があります。現在の標準的な利回りが4%だとすると、来年の6年は4%を減じて5.77円になります。2年後の6円は5.77円からさらに4%を減じるので5.55円となります。なぜこうなるのかというと、お金を運用すると4%の利子が付くわけですから、将来もらうお金は利子分だけ多くなければいけません。逆にいうと将来もらうお金を今の値段に換算すると利子分だけ差し引く必要があるのです。  このようにして、毎年6年のキャッシュを生み出すプロジェクトの現在の価値は、現在の6円から無限大年後の6円の現在価値の和ということになり、計算すると150円になります。この150円がこのプロジェクトの現在価値です。  IT投資についても基本的な考えかたは同じになります。システムへの投資によって将来どれだけのキャッシュ・フローが得られるのか、さらにこれを他の投資対象との比較からある一定の割引率で割引、現在価値を算出します。これがシステム投資へのコストと比較して合理的かどうかという基準で判断を下すことになります。

ITの投資対効果(IT-ROI)に対する考え方

 ITの投資対効果をどのように測定するのかという問題は古くて新しいテーマです。ITの投資対効果を測定する考え方には、大きく分けて二つの方向性があります。ひとつは情報システム投資がもたらす効果や価値を評価する方法。もうひとつは情報システムのコストの面に着目する方法です。  情報システムの投資について、投資対効果を強く求める投資なのか、必要経費として捉えるのかで考え方は大きく変わってきます。 投資対効果を求める投資であれば、当然その価値について注目が集まります。もし必要経費としての意味合いが強いのであれば、コスト面の方が重要となります。  価値を評価する手法には、DCF法、ITバランス・スコアカード法などがあります。一方コスト面を評価する手法としては、プロセス・コスト分析、ファンクション・ポイント法などを使った理論価格分析などのやり方があります。  価値についての評価手法の中で、全社レベルでのDCF法については定量的な観点から、ITバランス・スコアカード法は定性的な観点からの評価となります。 またコスト面の評価においては、理論価格分析はシステムコストそのものの妥当性について、プロセス・コスト分析は対象業務の効率化について着目したものになります。 投資対効果を測定する目的によって、どの面を重視するのかは変わっくるので、自社の状況に合わせた選択が必要となります。

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